大きな病院の中は消毒のにおいもなく、天井は高くて私は大きなホテルのように見えました。明るく陽は天井から差し込んでいました。でも広い待合室の椅子に座っている外来の人達はみな暗い顔をして自分の名前を待っていました。私は病室に入り、次の日に手術も無事に済みました。術後1日目から「院内はゆっくり歩く様にして下さい。」と看護師さんに言われました。
2Fから6Fまで2日間歩きました。入院患者の方に会うことは少なかったのですが、たくさん点滴を付けてトイレにゆっくり歩いている若い男性の患者さんや、歩行器を使用して看護師さんとゆっくり歩く女性の方。その女性の方は廊下の端によって邪魔にならないように立っている私に静かに頭を下げてくれました。患者さんの顔はみな重く暗い表情でした。私は2日間病棟の廊下を歩いたのち、病棟歩きをやめました。
1階の外来の待合室を歩くことしました。朝4時から1時間、夕方5時位から1時間、外来の始まる前と終った後に歩くことにしました。私が歩き始めると待合室の明かりが全部点きました。看護師さんが広い待合室のすみっこでゆっくり頭を下げて下さいます。私は何とも言いようのない嬉しさを感じました。大事にされている自分を思いました。
これからは人様を大事に思い、人にやさしさを積み重ねていきたい…そう感じながら5日間お世話になった大きな病院を後にしました。
病院スタッフのみなさん、ありがとうございました。
(板橋区/S・Y)