◆ブルドーザーの運転手さん『ありがとう』ある夏の話です。
そのころ私はフル装備の四駆にのっていました。
多少の悪路でも楽々走りきるその車は自慢の車でした。
いつものようにその車に乗って
妻と5歳の息子と
海岸線を走って楽しんでいました。
多少のぬかるみでも楽々と乗り越えるその四駆を過信していたのも事実でした。
その日の砂浜はなんとなく柔らかく
そのときは引き潮で遠浅だったのですが
「なんとなくいつもと違うな?」
という感じはありました。
妻の「陸にもどったほうが良くない?」という静止を
「大丈夫…大丈夫…」とふりきって
海側に切り込んでUターンしようとした瞬間…。
なんと車輪が砂に沈み亀の子状態になってしまいました。
しきりに
エンジンを吹かし脱出を試みますが、
車体はどんどん沈んでしまい…
とうとう車体が砂にうまった状態になってしまいました。
周辺に居た四駆の車に救助をお願いして
3台をつないで牽引してもらいましたが、
沈み込んだ車は全く動きませんでした。
そこは半島の先端に近い場所で
近いガソリンスタンドでも数キロはある場所でした。
日はかたむき、潮が満ちてきました。
気づくと波は車のボンネットあたりまで迫ってきています。
ドアを開けての乗り降りは不可能となり、
サンルーフから妻と
子供をそとに出しました。
息子は泣き出し、波はどんどん高くなり、
とうとうフロントガラスにまで押し寄せています。
途方に暮れて考えていると、
ふとここに来る途中に通った工事現場にブルドーザーが作業をしていたことを思いだしました。
しかしその場所までは3キロはあったはずです。
先ほどの牽引してくれた四駆の方にお願いして
その場所までつれていってもらいました。
ブルドーザーの運転者の方に事情を説明して…土下座してお願いすると、
現場の監督が快く「行ってあげな!!困ってるんだから…」
と了解してくださいました。
「ワラをもすがる思い」で先ほどの
海岸に戻ってみると
なんと…波は更に高くなり、
サンルーフまで届く高さになっていました。
潜水して
ワイヤーを車体に繋ぎ
パニック映画さながらに脱出を試みますが
潮に揉まれた車体は更に砂地に埋まり
さすがのブルドーザーでも上がって来ません。
ワイヤーは伸びきり…とうとう切れてしまいました。
唖然とする私。
泣き叫ぶ家族。
本当に後悔しました。
「
ローンはまだたくさん残っているしどうしよう?」
自分の愚かさを後悔してあきらめかけた瞬間。
ブルの運転手の方が
今までの倍はあろうかという太いワイヤーを投げてよこしてくれました。
そのときの運転手さんが神様にみえたものです。
その結果…私の四駆は脱出し、
ホッとして…車内に入り込んだ砂を掃除して気がつくと
その運転手さんはいつの間にか現場を去り
そのブルは遙か彼方に遠ざかっていました。
その
後ろ姿に私は手を合わせ
「ありがとうございました!ありがとうございました!」と
何度も頭を下げ、自分の行いを悔い反省したものです。
どうしてもお礼が言いたくて
翌日、その現場を訪れましたが、
すでに工事は終わっており
あの運転手の方が誰だったのかとうとう解りませんでした。
人は人に助けられて生きている事を実感させられた夏の日でした。
(渋谷区 Y.Tさん)
posted by 1039 at 07:46| 東京

|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
●見知らぬ方へ…ありがとう
|

|